CPUの選び方
パソコンの性能を決定する上で最も重要な役割を果たすCPU、インテルのCoreシリーズやAMDのRyzenなどが有名であり、店頭に行くと「Core Ultra 5なので安心です。」などと説明を受けることもある。
しかし同じCore何とか5でも100種類以上存在し、デスクトップ向けやノート向け、発売次期などによって性能は大きく異なってしまう。
本ページを読めば、CPUの基本から、型番やスペック表の読み方、ベンチマークテストなど、性能を測る上で重要な項目について理解でき、自身の用途や予算にあった最適なCPUを選択できるようになるだろう。それでは選び方の解説をはじめる。
- CPUとは何か?
- パソコン用CPUはIntelとAMDの2社から選択する
- CPUの性能に重要な要素1:グレードと世代
- 数字が上のものほどグレードが上位で高性能
- 世代が変わるたびに性能が15%程度上昇
- CPUの性能に重要な要素2:末尾のアルファベット文字
- Intel CPUの末尾文字の意味
- AMD CPUの末尾文字の意味
- CPUの型番の読み方を解説
- ベンチマークから性能を判断する
- スペック表から性能を判断する
- コア数
- スレッド数
- クロック周波数(動作周波数) (GHz)
- ターボブーストテクノロジー
- キャッシュ
- 製造プロセスルール
- Core iシリーズ vs Ryzen どちらがおすすめか?
- まとめ
CPUとは何か?
CPU(Central Processing Unit:中央演算処理装置)とはパソコンの頭脳に当たり、パソコンの演算処理を主に担当する。アプリケーションから来た命令、たとえばファイルを移動させる、Excelで数値計算を行うなどあらゆる操作をCPUがこなす。
CPUの性能が高いと指令に素早く答えることができ、パソコンの動作が使用者にとって快適なものとなる。
逆にCPUの能力が足りないと、Webサイトを見ている時にマウスのスクロールが滑らかでない、動画がカクカクする、動画形式の変換が遅い、急にクリックが反応しづらくなった、なかなかアプリケーションが立ち上がらない、ブラウザのタブの開きが遅い、などの問題が発生する。
パソコン用CPUはIntelとAMDの2社から選択する
パソコンの完成品はNEC、富士通、レノボ、デルなど複数のメーカーが開発しているが、その内部で使われているCPUの提供メーカーはIntelとAMDの2社が主である。
IntelとAMDはどちらもアメリカの企業であり、パソコン用CPUのシェアではIntelが世界トップであり、AMDがそれを追う形となる。
パソコン用CPU向けの主力ブランドとしてIntelはCoreシリーズ、AMDはRyzenシリーズという製品を発売している。
低価格向けとしてIntelはNシリーズ、AMDはAthlonという製品も発売しているものの、低スペックで動作が遅い上に影も薄い。
また、稀にスマホで高いシェアを持つSnapdragon製のCPUもWindowsパソコン向けに発売されているが、ARMというPC向け主力のx86とは異なるCPU設計で作られている。それゆえSnapdragonのCPUは特定ゲームが動かないなど多くのバグがあり、おすすめできない。
よって基本的にはCoreシリーズかRyzenを選んでいくことになる。
CPUの性能に重要な要素1:グレードと世代
ひとことにCore CPU、Ryzen CPUといってもその種類は数百種類を超え、性能も千差万別である。これらを区別するために必要なグレード及び、世代についてまずは説明する。
数字が上のものほどグレードが上位で高性能
Core シリーズはCore 3、Core 5、Core 7、Core 9と更に細かくグレード分けされており、数値が大きいほどハイエンドなCPUである。
また、2023年年末以降はCore iシリーズが廃止され、Core Ultraと単なるCoreシリーズにブランドが分かれることとなった。
Ryzenシリーズについても同様のことが言え、Ryzen3、Ryzen5、Ryzen7、Ryzen9とシリーズ分けがされており、数値が大きいほどハイエンドなCPUである。
それぞれラインナップを表にすると次のようになる。
カテゴリー | メーカー | CPU名 |
---|---|---|
ハイエンド | Intel | Core Ultra9/i9 |
Core Ultra7/i7/7 | ||
AMD | Ryzen 9 | |
Ryzen 7 | ||
ミドルエンド | Intel | Core Ultra 5/i5 |
Core i3/3 | ||
AMD | Ryzen 5 | |
Ryzen 3 | ||
ローエンド | Intel | Nシリーズ |
Pentium(2022年廃止) | ||
Celeron(2022年廃止) | ||
AMD | Athlon |
世代が変わるたびに性能が15%程度上昇
各シリーズはほぼ毎年アーキテクチャが刷新されて同名のシリーズとして発売される。
この毎年刷新されるアーキテクチャが、最初から数えて何代目かを表した言葉が世代であり、世代が新しいものほど性能がアップする。年にもよるが世代ごとにおおよそ15%程度性能が上がる。
世代の見分け方は型番の項目で詳しく説明するが、シリーズ名に続く最初の1,2桁の数値が世代を表す。Core i9-14900Kだと14世代目、Core i7-1360Pだと13世代といった塩梅である。
ただ、Core Ultraシリーズの登場からCore Ultra 185Hなど再び1から始まるようになったため、便宜的に新第1世代と呼ぶようにする。
Ryzenに対しても同じようなことが言え、Ryzen 9-9950Xだと9世代目のRyzenということができる。厳密にはRyzenの場合アーキテクチャの世代と番号が異なるため9世代と公式には言われていないが、ともあれ数字が大きいほど新しい。
またそれぞれの世代について下記のように開発コードネームがつけられており、特にIntelはコードネームでCPUが語られることもあるため、覚えておいても損はない。
世代 | 開発コードネーム |
---|---|
新第2世代(ノート用) | Lunar Lake |
新第2世代(デスクトップ用) | Arrow Lake |
新第1世代 | Meteor Lake |
第14世代 | Raptor Lake Refresh |
第13世代 | Raptor Lake |
第12世代 | Alder Lake |
第11世代(ノートPC) | Tiger Lake |
第11世代(デスクトップPC) | Rocket Lake-S |
第10世代 | Ice Lake |
第9世代 | Cofee Lake Refresh-S |
第8世代 | Cofee Lake |
ちなみに、コードネームは開発段階でつける製品(またはプロジェクト)の名前であるが、発売されていない製品に関する会話をプロジェクトメンバーが円滑に進めるられるようにつけるものである。
CPUの性能に重要な要素2:末尾のアルファベット文字
CPUの性能を知る上でもう一つ重要な要素が末尾のアルファベットである。例えばCore i9-14900KならばKが末尾文字であるが、多くの場合はCPUの特徴を表す。
Kはオーバークロックの意味で、消費電力を上げて性能を引き上げるオプション機能が付属しているという意味合いである。
Intelの代表的なものは上の図のようになる。消費電力を横軸に、性能を縦軸にとると大体の文字は整理ができる。
特にノートPCは消費電力がバッテリーの持ちに大きく関係するため、性能を取るか、ロングバッテリーを取るかを選択する必要が出てくる。
Intel CPUの末尾文字の意味
IntelとAMDのCPUの末尾文字をまとめておく。まずはIntelから。
特に注意すべきものとして、Fはグラフィックボード搭載が必須となっており、搭載しないと画面に何も出力することができないモデルとなるので、単品で購入する場合は気を付ける必要がある。
AMD CPUの末尾文字の意味
次にAMDのケースは次のようになる。
AMDのデスクトップCPUの通常版やX版はIntelのFと同様でグラフィックボードの搭載が必須である。単品での購入は注意しよう。
ノートPC用はあまり種類が多くないため判別が付きやすいだろう。
CPUの型番の読み方を解説
ここまでの解説でほとんど読めるようになっていると思われるが、型番は図のように左からグレード、世代、マイナーバージョン、特徴の順で書かれている。
マイナーバージョンは、さらに細かい製品分けで使われるバージョンで、同グレード、同世代のCPUの場合はマイナーバージョンで性能を区別できる。そこまで性能差は大きくないが、バージョンが高いものほど高性能であると考えてよい。
CPU選びの基本は、まずグレードと世代からどのレンジのCPUかを判断し、用途にあった種類のCPUを選択し、価格と照らし合わせて判断することである。
ベンチマークから性能を判断する
型番の読み方でおおよその選び方は理解いただけたかと思うが、いくつか疑問も残る。
- 前世代のCore 7と新世代のCore 5ではどちらの性能が上か?
- Core UltraシリーズとRyzenのとあるCPUでどちらの性能が上か?
- デスクトップ向けとノート向けCPUでどれぐらい性能が異なるのか?
- 用途による向き、不向きがイマイチ分からない
このような型番だけでは判別がつかない問題に答えるために、CPUの性能を多角的に判断するベンチマークテストが外部の機関・企業により提供され、その結果が公開されている。
有名なベンチマークを3つ紹介しておく。
テスト名 | 説明 |
---|---|
PassMark | CPUの総合的な性能を測るテスト、オーストラリアの有限会社が運営しておりベンチマークとしては信頼性が高い。 |
3DMark | 3Dの描画能力を図るためのベンチマーク、この値が高いほど3DやVRゲームで滑らかな描画を実現できる。 |
Cinebench | 画像のレンダリング性能を測るソフト、この値が高いほど3Dのモデリングなどの映像編集作業に向いている。 |
基本的にベンチマークテストによらずCPUの優劣はほぼ同じであるため、代表的なPassMarkの結果を参考にすると良いだろう。ベンチマーク結果をスコアの目安とともに表としてまとめてあるので下記を参考にして欲しい。
スペック表から性能を判断する
パソコンのCPU仕様の欄には(24コア/5.00GHz/TB時最大5.80GHz/36MB スマートキャッシュ)などと書かれている。
これらの数値が高さが直接性能の高さに繋がるわけではないが、CPUに関する用語を知っていると、性能の予想がつきやすいと思われるので解説しておく。
コア数
CPUは演算を行う中核であるコアというパーツを持ち、この数がコア数である。
複数のアプリケーションを同時に実行しようとした時、一つのコアに集中して処理を任せるのではなく、複数のコアに任せることで負荷分散をさせ、アプリの動作を軽くすることができる。
また、単一のアプリケーションを実行する場合であっても、そのアプリケーションの処理がマルチコアに対応している場合には、処理を軽快にこなすことができる。イメージを書くと次のような感じになる。
マルチコアへの対応は完全にアプリによりけりであり、同じアプリ内であってもマルチコアを必要とする処理としない処理に分けられる。
画像の緻密な光の当たり具合を計算するレンダリング処理、Youtubeに動画をアップロードするためなど動画形式を変換するエンコード処理、あるいはAI処理などはフルにマルチコアの能力が使われる事が多い。
一方でブラウザやオフィスの単純な操作はシングルコアのタスクであり、コア数が多くても恩恵は受けない。ゲームはある程度マルチコアを有効利用しているが、映像編集やAI処理ほどコア数を必要としない傾向がある。
また、Intel CPUは12世代以降、性能を重視したPerformance-core(Pコア)と低消費電力だが非力なEfficient core(Eコア)の2種類のコアを持つハイブリッドアーキテクチャを採用しており、効率的に電力消費を抑えつつ、高いパフォーマンスを発揮できるようになっている。
スレッド数
次にスレッド数は、ソフトウェア側から見えるコア数のことを言う。実際の物理的なコア数とは異なるため、仮想的なコア数とも呼ばれる。
一つのコアにはいくつもの演算ユニットが存在するが、全ての演算ユニットが常に使用されるわけではない。
そこでソフトウェアがCPUに命令する入口(=スレッド)を増やし、余剰の演算ユニットを効率的に使えるようにしようという考えが生まれた。
1コア2スレッドの場合、コア自体は1つであるが、そのコアに対して2つの命令が同時に行え、中の演算ユニットやメモリなどのモジュールを共有して効率的に使用するのである。
物理的なコア数はあくまで1つであるため、性能的には2コア2スレッドは、1コア2スレッドのCPUに劣ることは自明である。
クロック周波数(動作周波数) (GHz)
CPUはより物理的な仕組みとして、電圧の波を発生させ、その波の変動により同期を取り計算を実行している。コアごとに1秒間に発生させることができる電波の波の数をクロック周波数と呼び、命令を処理することが可能なタイミングの数と考えれば良い。
クロック周波数の単位としてはGHz(ギガヘルツ)が使われるが、5GHzならば1秒間に50億回電波の波を発生させていることになる。
基本的にはクロック周波数が高いCPUほどシングルコアでの性能が高いと言えるが、1回の命令で実行できるタスク量はCPUのアーキテクチャによるため、単純にクロック周波数だけでシングルコアの実力を測ることは困難である。
よって同世代のCPUの比較程度にとどめておくのが現実的な見方であろう。
ターボブーストテクノロジー
CPUにもよるが、各コアはCPU内の温度や、他のコアの使用状況に応じてクロック周波数を一時的に引き上げる機能を持つ。
IntelはこれをTurbo Boostテクノロジー(TB)と、AMDはTurbo Coreテクノロジーとそれぞれ命名しており、スペック表ではTB時最大3.50GHzや2.2GHz(Max 4GHz)など、通常のクロック周波数とは区別して記載される。
この機能により、特定のシングルコアに重い負荷が加わった時の処理を加速させることができる。ゲームの他、通常のオフィスの起動、Excelで計算を回す時など様々なシーンで用いられている。
キャッシュ
スマートキャッシュ6MB等スペック表に記載されているがこれは何か?キャッシュとは一時的に計算結果などを保存しておく領域の事で、この場合CPUの中にキャッシュ機能を積んでいる。
ハードディスクやSSD、メモリーも同様にデータを保存する領域であるが、CPUとの物理的な距離が離れているため演算処理の途中結果を保存しておくには効率が悪い。
しかしCPU中のキャッシュはCPUのコアと物理的に近い場所にあり、かつ少量ながら高品質であるため非常に高速である。さらにスマートキャッシュという技術により、より効率的にこの少量のキャッシュを使用することができる。
基本的にはキャッシュの値が大きいほどCPUの性能が高まると考えておけば良いだろう。
製造プロセスルール
直訳すると製造工程のことだが、CPUなど半導体製品においては集積回路の線の幅のことを言う。単位としてはnm(ナノメートル)を使う。それほど線は細いのである。
良く新製品で5nm(ナノメートル)の微細化を実現などと書かれてあり、だからどうなんだと思うのが普通であるが、微細化すると低消費電力で高性能を発揮しやすくなる。
次世代CPU発売などアーキテクチャ刷新のタイミングで更新されることが多い。
裏の話であるが、実際のところどの幅のことを言っているのか各社により定義が違うためIntelとAMDでの比較は難しく、単にマーケティング用語になっているだけの節もある。あまり気にする必要は無い。
Core iシリーズ vs Ryzen どちらがおすすめか?
ソニーか任天堂のどちらが良いかというゲハ戦争(ゲームハード戦争)のようにIntelとAMDのどちらが良いかという比較議論が界隈ではよくされる。
論争は様々であり、またIntelもAMDも様々な種類のCPUを様々な価格帯で販売しているものだから、一概にどちらが良いかを論じることは無理がある。
ただし、全体的な傾向としてはRyzenは価格比でマルチコア性能が高く、3Dモデリングやプログラミングなどのクリエイティブな用途で活躍が期待でき、Intelは有名ソフトウェアに関してソフトウェアの最適化を行っているため、オフィスソフト、Adobeなどで快適に、そして安定的に動作が期待できる。
細かい内容は下記にまとめたので参考にして欲しい。
まとめ
CPUの型番やスペックの読み方を説明した。これである程度CPUについて理解できるようになったはずである。
あとはCPU性能比較表等を参考に最終的なCPUを決定していってほしい。