NVIDIA GeforceとAMD Radeonの違いを徹底比較
コンシューマ向けGPUであるNVIDIA GeforceとAMDのRadeon。RT CoreとRay Accelerator、DLSSとFSRのように、それぞれ同じような特徴の機能を異なったマーケティング名で出してきているため、その違いが良く分からないケースが多い。
また当サイトではGPU性能比較表により、ベンチマークや実環境においてゲームでどの程度のフレームレートが出るかを表示しているが、特定アルゴリズムでのレンダリング性能やメモリアクセス性能など表では表現できない部分も多い。
そこで本ページではGeforceとRadeonを包括的に比較し、パソコン購入時の判断の一助となる事を目指す。依然としてベンチマークは重要であるため、最後にGeforceとRadeonの性能比較表も載せる。
- GeforceとRadeonの比較をテクニカルを中心に俯瞰する
- レイトレーシング (RT Core vs Ray Accelerator)
- 超解像技術 (DLSS vs FSR)
- プログラミング
- キャッシュ/メモリ機構
- 3Dレンダリング (OptiX vs Pro Render)
- アプリ
- 用途ごとにGeforceとRadeonを比較
- Geforce vs Radeon 性能比較表
GeforceとRadeonの比較をテクニカルを中心に俯瞰する
まず比較を一覧できるように、要素ごとにGeforceとRadeonの技術やアプリなどを列挙してみる。片方がもう一方より優れている項目に対してはハイライトをして示した。
Nvidia Geforce | AMD Radeon | |
---|---|---|
アーキテクチャ | Ada Lovelace | RDNA3 |
レイトレーシング | RT Core演算 | Ray Accelerator |
超解像技術 | DLSS(Deep Learning Super Sampling) | FSR(FidelityFX™ Super Resolution) |
プログラミング | CUDA/OpenCL | OpenCL |
キャッシュ | Infinity Cache | |
メモリアクセス | Resizable Bar | SMART Access Memory |
3Dレンダリング | OptiX Renderer | Radeon ProRender |
アプリ | NVIDIA BroadCast APP |
この表をもとにそれぞれの要素について説明していく。
レイトレーシング (RT Core vs Ray Accelerator)
レイトレーシングは光(Ray)の経路を追跡(Tracing)して、最終的にモニタに映し出される画素を決定するレンダリングの技術であり、光の描写を現実世界に近づけ、より実写に近い映像を作り出すことができる。
百聞は一見に如かずなので、次のマインクラフトの絵を比べてみて欲しい。(マウスやタップでぐりぐり可能)。右がレイトレーシングOnの状態であるが、描写が大きく変わることが分かるだろう。
レイトレーシングは膨大な計算量が必要となるため、フレームレートが極端に落ちてしまう。しかしNvidiaのRTXシリーズはRT Coreというレイトレーシングの演算に特化した半導体チップを搭載しており、ハードウェアレベルの最適化を行っていないRadeonと比べて優位性が高い。
超解像技術 (DLSS vs FSR)
超解像は低解像度の画像から高解像度の画像を作り出す技術である。この要素技術として、膨大な画像パターンをディープラーニングで学習させ、高解像度画像の再現率を大幅に向上させたものがNvidiaのDLSS(Deep Learning Super Sampling)である。
ディープラーニングはアルゴリズムは単純であるが計算量は非常に大きい。この計算量を瞬時に捌くためにNvidiaはTensor CoreというAI計算に特化した専用ハードウェアを搭載している。
一方でRadeonのFSRはより汎用的な超解像技術であるため、幅広いグラフィックボードに適用可能という特色はあるものの、性能はDLSSに遠く及ばない。
プログラミング
GPUを使ったアプリの開発を行いたいのならば、OpenCLよりCUDAの方がよりポピュラーである。
OpenCLはオープンソースの技術であり、GeforceとRadeonの両方で利用することができるが、CUDAはNvidiaが開発したGPUを簡単に扱うことができるToolKitであり、Radeonでは利用ができない。
このためGPUを使った何かしらの開発がしたいのならば、選択肢が広いGeforce一択であろう。
キャッシュ/メモリ機構
GPUは自身で数ギガバイトのメモリ(VRAM)を抱えているが、GPUのCoreとVRAMのやり取りはそれほど高速ではないため、キャッシュと呼ばれる小容量であるがVRAMよりも高速なメモリをGPUのCore付近に抱えている。
GPUに近い順にL1キャッシュ、L2キャッシュ、L3キャッシュと呼ばれ、近い順に小容量で高速になる。Infinity CacheはこのうちのL3キャッシュを飛躍的に強化したものであり、大容量のデータ転送を高速化できる。
また、ゲーム中はCPUとGPUの間でもメモリを介して多くのやり取りが行われるが、CPUからGPUのメモリの全てにアクセスできるようにした技術がRadeonのスマートアクセスメモリである。これによりCPU、GPU間の通信がよりスムーズに行うことができる。
Ryzen 5000シリーズ以降のCPUにしかスマートアクセスメモリは有効とならないという制約があるが、同種のNvidiaが採用しているResizable Toolbarよりも高速である。
これらのキャッシュ・メモリ機構により、ゲーム中にフレームレートを安定させやすい、すなわち重くなりにくいという効果がゲーム中で得られやすい。
3Dレンダリング (OptiX vs Pro Render)
Blenderなどのアプリケーションを用い、3Dモデリングでリアルな映像表現を実現するためにもレイトレーシングは欠かせない技術である。
NvidiaはOptiXというレイトレーシング専用のレンダリングエンジンを提供しており、リアル映像表現をGeforceを用いて高速に描画することができる。
一方でAMDもPro Renderというレンダリングエンジンを提供しているが、レイトレーシング性能ではRadeonはGeforceに及ばないため、レンダリングは遅く、映像の再現性も低い。
3DCG作成はモデリング作業を行いレンダリング結果を確認する繰り返しとなり、プレビューの忠実度と速度は非常に重要となるため、Geforceに軍配が上がる。
アプリ
Geforce RTXシリーズの機能をフルに使ったキラーアプリがNVIDIA Broadcastアプリである。
アプリというよりは、OBS StudioやTwitch Studioのような配信系やZoom、Teams、WebEx、Skypeのようなビデオ会議系のアプリと、使用するカメラ、マイクの間に入ってノイズ除去や周囲の背景を変えたりぼかしたりするソフトウェアである。
TensorコアによるAI系処理能力をフルに活用しており、例えば隣で家族がドライヤーをしていたとしても全く雑音が会話に入らないなど、その能力は非常に高い。
用途ごとにGeforceとRadeonを比較
これである程度の前提知識は得られたと思うため、次は用途によってどちらを選ぶべきかを見極めていきたい。
Nvidia Geforce | AMD Radeon | |
---|---|---|
美麗なグラフィック | 〇 | |
Eスポーツ | 〇 | |
GPUアプリ開発 | 〇 | |
クリエイティブ | 〇 | △ |
ビジネス | 〇 |
まずは美しい映像でゲームをプレイしたい場合はレイトレーシングの性能が絶対的にモノを言うためGeforce一択である。DLSSで4Kのアップスケーリングを行いレイトレーシングを有効にすることが最高峰のグラフィックを楽しむための王道である。
同じゲームでも動きの速いFPSの場合はどうか?高解像度やレイトレーシングはフレームレートが落ちるため競技用として有効にしている人は聞いたことがない。代わりに高フレームレートが重要となるため、レイトレーシングも、高解像度向けの機能であるDLSSも出る幕は無い。コスパを考えると動きの速いEスポーツを行う場合にはRadeonが良いのではなかろうか。
次にGPUを利用したアプリ開発。これは明確にCUDAが使えるGeforceで前述の通り一択である。
次に3DCG作成などのクリエイティブ分野であるが、これもAdobeやBlendarなど一般人が良く使うソフトではGeforceに軍配が上がる。Geforceの方がRadeonよりもレンダリング能力が高く、トライアンドエラーを繰り返しやすい事に加え、動作も安定している。
動作が安定している理由は使用ユーザが多いからである。GeForceとRadeon由来の不具合が2つあり、深刻度が同等だとすると、シェアが高いGeForceの修正をアプリ開発者が優先するからである。
ただし、3DS Max、Energy、Medical、Simens NXなど多くの業務用アプリケーションのベンチマークであるSPECviewperfによると、特にメモリの優位性によりRadeonの方が良い結果を示しているものも多く、ソフトによりけりといったこともある。
最後にビジネスでは、会議などでNvidia BroadCastアプリが騒音の多い環境では非常に重宝するだろう。
Geforce vs Radeon 性能比較表
最後にGeforceとRadeonの性能を示す。有名ベンチマークであるPassMark、3DMarkスコアと、ゲームを遊んだ時に期待できるFPSを各解像度ごとに併記している。表の見方や検索方法の例は下のメニューを開けて確認して欲しい。
レンダリングにはDLSSやレイトレーシングは特に考慮されていないので、純粋なGPUとしての実力を測る指標といえる。