業種別値動きの特徴

リスクを抑え、安定的な収益を上げるための基本として複数の異なる業種の銘柄を組み合わせて持つ分散投資が重要ですが、 、PER、PBRを業種別に見ていくと業界ごとに大きな差があることに気づきます。

医療は収益率があまり高くないのに多く株を買われ、商社は株の利益還元率が高いにも関わらず敬遠されるといった事が起きています。

何故このような事が起きるのか?またどの業界の株を主に買うと良いのか?それは本人の投資におけるリスクの許容量も影響してきますが、業種別の株の特性を知っておくことは分散投資を行う上で約に立つはずです。ここでは業界別の値動きの特徴を把握する事を目指します。

収益率は低いが安定しているディフェンシブ株

食品、医療、鉄道、電力・ガス、通信は不況に強い、ディフェンシブな業界と言われています。それぞれ社会のインフラを担っており、これらがなくなっては生活が成り立たなくなる事から不況になって物が売れなくなった時でも必需品、必需サービスとして利益を出し続ける事ができます。

勿論景気が悪くなると食品はより安いものに抑え、通信費も抑制し、電力は電気をこまめに消すなど多少の影響があるかもしれませんが、贅沢品ではないのでその影響は軽微なものとなります。

また、市場を独占している会社はよりディフェンシブな色が強まります。スマホがiphoneに一色になることはあっても、JR東海が外資の侵攻により変わるという事はないでしょう。

株価の特徴としては、業績のブレが少ないので値が比較的安定しやすく、大幅に上がる事もなければ大幅に下がる事もありません。よって定期預金の利息が低いのと同様、ディフェンシブな業界はリスクが少ない代わりにリターンも少なくなります。ローリスク、ローリターンの業界であると言えます。

状況変化の影響を受けやすい株

大小はあるにしても景気や国際競争・技術競争等の影響を受けて業績が上下しやすい株も多いです。

トヨタや日産などの自動車メーカー、ソニーやパナソニックなどの家電メーカーは海外販売比率も高く国際情勢の影響を受けやすい他、海外との価格競争や技術競争も激しくいつ業績が落ちてもおかしくない会社です。

そのような業績が安定しない株は、株価収益率は高くなりやすく、リスクが大きい代わりにリターンも大きくなる傾向があります。

また商社は資源価格に左右されやすく、銀行は不景気になると資金需要が乏しくなりかつ貸し倒れも起こりやすくなり、同様にリスク、リターンが大きくなりやすいいえます。

また半導体メーカー、パネルメーカー、鉄鋼、化学素材メーカーなどは景気敏感株と呼び、好景気の時は設備投資需要などで多くの企業が成長投資を行うためものが売れやすくなる一方、不況時には在庫調整を余儀なくされる、あるいは工場の稼働率が落ちるなどで大幅な減収となり業績が安定しにくい業界であるといえます。

各業界別の特徴

日経の33業種分類に基づいて、それぞれの特徴を簡単に説明します。ただし、かなりざっくりとした区分で、例えばソニーは金融、ゲーム、音楽などの事業を持っているが電気機器に分類されているなど分類が難しいものも多いです。また多くがサービスとして区分されるなど業界ごとの会社数には大きな偏りがあります。よってあくまで目安として所感を述べていきます。

水産・農林業

日本水産、マルハニチロ、サカタのタネなど。食品関連でサカタのタネを除き海外売上高比率が高い企業もないためややディフェンシブといえる。内需中心であるが、海外進出による成長の余地はある。

鉱業

国際石油開発帝石、石油資源開発など。時価総額の大半が国際石油開発帝石。政府がエネルギー安定供給のために黄金株という買収関連の案件にたいして拒否権を発動できる権利を持っているため他の会社が買収する事はできない。石油価格の変動影響は受けるが、日本市場においては寡占的なポジションにいるのでその点では安定的な利益を稼ぐことができる。太陽光、風量などの再生可能エネルギー改革で石油資源の需要が乏しくなることが不安材料。またその他鉱業も資源価格の影響を直接受け業績のぶれは大きい。

建設

大和ハウス、積水ハウス、大成建設、鹿島、大林組、清水建設など、目先は好調であるが市場の先細りや従業員の高齢化が課題。海外でのプロジェクトもそれほど多くはない。今後人口減に伴う需要減にも耐えられるかがポイント。海外との競合は少なく為替にも左右されにくいが公共事業や民間投資に左右される。慢性的な人手不足が特徴で、これがどう業績に影響を与えるかは気になるところ。

食料品

キリン、アサヒ、サントリー、味の素、明治、日本たばこ産業など。生活必需品も多く、不況の影響で急激に業績が悪化することはないのでディフェンシブの典型。業種間比較のPERも高い。海外進出は徐々に進んでおり、味の素、日本たばこ産業は半分以上を海外で稼ぐ。

繊維製品

東レ、帝人、ワコールなど。東レが最大。繊維は国際競争にも晒される、他社の設備投資などの影響も受けるため景気敏感株。

紙・パルプ

王子HLD、日本製紙、レンゴーなど。繊維と同様素材のため景気敏感株。国内市場は低迷だが、海外売上比率を徐々に高めてきている。PERとしては割高な印象。

化学

信越化学工業、花王、富士フィルムHLDG、ユニ・チャーム、旭化成など、生活必需品を扱っている会社と半導体化学材料などの素材を扱っている会社があり、ディフェンシブと景気敏感型両方が存在する。知名度が低く、個人に人気がないのかBtoBの企業だと割安に放置されている会社も多い印象。

医薬品

武田薬品、アステラス製薬など。景気が悪くなったところで患者数が減るなどの需要がなくなるわけではないためディフェンシブ。また医療業界への参入障壁は高い。業界平均PERも高い。ただし医薬品業界の再編や海外競争などはそれなりに激しい。

石油・石炭製品

JXTG HLDG、出光興産、昭和シェル石油など。石油価格や為替変動の影響が大きい。鉱業との分類の仕方がやや曖昧だが、掘り起こすのが鉱業で、掘り起こされたものを加工して売るのが石油・石炭製品。

ゴム製品

ブリヂストン、住友ゴム工業など。合成ゴムの原材料はナフサで、ナフサは原油から作られるため原油価格の影響を受けやすい。タイヤの場合はトヨタのように国際的な不買運動につながる事は少ないため政治的影響は受けにくい。因みにプラスチック、ポリエステル、塗料、合成洗剤など多くのところでナフサは使われている。原料価格は景気に敏感であるが、タイヤは交換需要があるため比較的業績は安定しやすい。

ガラス・土器

旭硝子、TOTO、日本硝子など。ガラスは窓ガラスの他液晶パネル、太陽光、自動車等にも使われる。中国勢が低価格構成に押され利益が出にくい構造になってきている。素材系のため景気敏感株

鉄鋼

新日鉄住金、JFEホールディングスなど。中国が世界の半分以上の鉄を生産、過剰気味で需給改善が必要。日本は高付加価値の自動車用鋼板などに注力。世界の開発投資需要に左右される景気敏感株

非鉄金属

住友電気工業、三菱マテリアル、古河電気工業など。レアメタル、セメント、アルミなど、住友電気工業は自動車用ワイヤハーネス(車用の電線)、光ファイバーで世界有数。景気敏感株。目立たない企業が多いため割安に放置されているものも多いと思われる。

金属製品

LIXILグループ、SUMCO、リンナイなど。住宅関連設備、ガス器具、アルミ缶などの最終製品を製造。景気に左右されるかは製品によるところが大きい。

機械

ダイキン、小松製作所、SMC、クボタ、三菱重工など。空調、建設機械、電動器具、航空エンジン等。公共事業等土地・インフラ開発に左右されることも多い。景気敏感株

電気機器

キーエンス、ソニー、キャノン、ファナック、パナソニック、村田製作所、三菱電機、日立、富士通、NECなど。IT,家電製品、FA(Factory Automation)センサーなど多岐にわたる。あまり区分されていないカテゴリ。景気敏感株と言えるが業種も多様。富士通やNECはこの分類のものの実際は情報通信業にあたると思われる。

輸送用機器

トヨタ、ホンダ、日産、デンソーなど。為替、政治の影響を強く受け、国際的な友好関係など様々な要因により業績が左右される。更に自動運転、電気自動車など業種を跨いだ開発も盛ん。関税・不買運動など、国際関係によるリスクが大きいためPERは低め。

精密機器

HOYA、テルモ、オリンパス、シチズン時計など。医療用機器、計測機器、時計など。医療用は途中で他社製の製品に交換するなどの代替が難しいため収益は安定しやすい。ややディフェンシブでPERは低め。

その他製品

任天堂、バンダイナムコHLDG、凸版印刷、ヤマハ、パイロットなど、娯楽、文具系が多い。ゲームはレジャーと比べて金額が安いので不況に強いと言われる。

電気・ガス

東京電力、関西電力、東京瓦斯(ガス)など、電力・ガスの自由化があるとはいえ、実質的に地域独占会社が多く、ディフェンシブであるが、原子力の活用等課題も多く、今後の成長にも疑問が残るためPERはやや低め。

陸運業

東日本旅客鉄道、東海旅客鉄道、ヤマトHDLなど。不況時に鉄道に乗らなくなる事もないためディフェンシブ、また宅配系はネット通販で需要が旺盛だがドライバー不足が深刻、大口顧客の交渉力が強く利益が出にくい状態。値上げの浸透により徐々に業績が回復している印象。

海運業

商船三井、NSユナイテッド海運など。鉄鉱石や石炭を運ぶばら積み船の値動きを示すバルチック指数などの海運市況に影響。船舶は過剰供給気味で運賃は低迷が続く

空運

JAL、ANAの2社のみ。燃料の影響を受けるが、景気に関わらずグローバル化の影響もあり、比較的安定的に需要が見込めるためややディフェンシブ。

倉庫・運輸関連業

上組、三菱倉庫、住友倉庫など。ネット通販の配送拠点としての需要が伸びる。在庫管理やIT化が今後の成長のカギを握る。

通信

NTT、ソフトバンク、KDDI、ヤフー、NTTデータなど。通信業界の需要はIoTやAIの流れに乗り引き続き堅調。安定的に市場も伸びているためPERは高め。動きが早い業界なので最新IT動向のチェックが必要。

卸売業

三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事等。商社は資源価格の影響を受け、資源価格が上がれば商社は利益を伸ばすことができる。為替の影響も受けやすいためPERは低め。また事業投資会社としての側面も持ち、非資源系にも注力してきている。

小売業

セブン&アイ、ファーストリテイリング、ニトリ、イオン、スタートトゥデイ、良品計画など。国内のパイが限られている中でどう動くか、海外進出があるかなどが注目点。株主優待を実施している会社が多く、知名度も高い企業や株主優待を実施している企業も多いからか、市場拡大が見込めない割にPERは高め。

銀行業

三菱UFJ、ゆうちょ銀行、三井住友、みずほ等。世界的低金利や日本のマイナス金利の影響を受け、利ザヤで稼ぐことが難しくなりつつあるが、メガバンクは海外の成長の取り込みに積極的。利益圧迫要因が多くPERは低め。景気が悪くなると資金の貸出先が無い、貸し倒れの危険性などがある。景気敏感株。

証券

野村HLDG、大和証券グループ、SBI証券など。個人の株式売買手数料、増資や社債の発行時に取る手数料、M&Aのコンサルティングなどが収益源。株式相場に収益がよるところが大きく、景気敏感株

保険

東京海上、MS&AD、第一生命など。為替相場や金利の影響に保険料の運用収益が左右される。ただ、生命保険や損害保険の徴収は定期的に入り続けるためその点ではややディフェンシブ。東京海上は成長戦略として海外保険事業のM&Aを拡大させている。

その他の金融業

オリックス、日本取引所グループ、三菱UFJリース、イオンフィナンシャルサービスなど。リースや事業投資、クレジットカードなど。リース対象は飛行機、自動車、不動産、ソフトウェア、産業用工作機械と多岐にわたる。企業のインフラ投資に影響するという意味ではやや景気敏感株。クレジットカードは決済量が増加傾向にあり追い風。

不動産

三菱地所、三井不動産、住友不動産など。オフィスビル、マンション開発、賃貸などで収益を得る。全体としては人口減だが、人口の都心集中のため、都心部は賃料を維持。不景気だと企業倒産、事務所閉鎖、マンション購買意欲の低下などにより収益が落ちる。景気敏感株

サービス業

リクルート、オリエンタルランド、セコム、楽天、電通など、この業態に含まれる企業が最も多い。大幅な設備投資を行っているわけではないので固定費は軽め、広告は不況になると広告宣伝費が抑えられる、人材系は人手に余剰感が出て求人が減るなど影響が出る。一方でオリエンタルランドは不況知らずのディフェンシブといえる株もある。

業種別の細かい統計情報は規模別・業種別PER・PBR(連結・単体)一覧を見れば良いわ!